DAI-ICHI BUSINESS SCHOOL


5限目 スタート 海外事業 海外事業分野のポイントを知ろう! 今回の講師は国際業務部の古市佳代子さんです。

みなさんこんにちは。古市です。わたしたちの仕事についてしっかり理解してくださいね。

業界をリードする、第一生命の海外事業とは

「国内生保、国際競争へ」と経済紙が報じたのは2014年6月のこと。第一生命が米国の中堅保険会社プロテクティブ生命を57億ドル(6500億円)で買収するという報道は、業界内外で大きな話題を呼びました。これは国内生保が行なった海外企業のM&A(合併・買収)では最大規模となります。当社の渡邉社長は記者の質問に「米国の生保市場は今後も年4%程度の着実な成長が見込める」と答え、今後も成長の期待できる市場に積極的に出て行くことを示しました。
2007年より海外進出を開始した当社は、現在、ベトナム、インド、タイ、インドネシア、オーストラリアに現地法人または関連会社を有し、各国で生命保険事業を展開しています。2015年2月にはプロテクティブ生命を完全子会社とする手続きが完了したため、海外事業ネットワークは6カ国となり、グループの全収益のおよそ3割を海外事業で稼ぐ体制となりました。

第一生命は海外事業を「グループを成長させるドライバー」と位置づけ、積極的に推進しています。2015年2月にはプロテクティブ生命の経営管理・支援のほか、米州での事業拡大を担う「地域統括会社」をニューヨークに設立しました。続いて4月にはシンガポールにアジア4カ国の子会社および関連会社を統括する会社を立ち上げます。
これにより、第一生命の海外事業は、東京の「グループ経営本部」を軸に、日本、米国、アジア・パシフィックの“3極”が連繋して、シナジー効果を高め合いながら、グローバルな展開を推し進める体制がスタートします。

国内 北米地域統括会社 アジアン・パシフィック地域統括会社 第一生命 

生命保険にはついこの間まで“ドメスティックに特化した事業”というイメージがありましたが、すでにそうした時代ではないことを、まずは知ってほしいと思います。
くわえて、業界では第一生命がグローバル・トレンドの先頭に立ち、他社を大きくリードしていることを、皆さんの今後のフィールドワークで確かめてほしいとも思います。

海外生命保険事業への具体的な取り組み

では、次に海外でどんな事業展開をしているのか、もう少し具体的に説明しましょう。
第一生命では、海外事業を「今後の成長性に期待できる市場」と「収益拡大およびリスク分散に直結する市場」の2つのカテゴリーに分け、それぞれにふさわしい取り組みを進めています。前者はベトナム、インド、タイ、インドネシアの事業で、後者は米国とオーストラリアの事業のことです。
前者においては、当社が国内で110年以上にわたり蓄積してきた保険事業のさまざまなノウハウや、国の社会保障制度の整備を支援してきた経験を、各国の法律や風土に合わせて提供しています。
また、後者では事業の拡大に必要な資本の供給を行なう一方で、それぞれが持つノウハウや経験を利用し合うことによって体力強化を図るとともに、グループとしての収益力を高めることを目指します。プロテクティブ生命が持つM&Aを活用した事業拡大のノウハウや、オーストラリアの子会社TAL社が持つダイレクト販売のノウハウは、当社およびグループの成長に大いに貢献すると思われます。

アジア市場での展開とは?

第一生命が最初に進出したベトナムでは、現地保険会社を買収し、「第一生命ベトナム」と社名も新たに事業を展開しています。第一生命ベトナムは、進出から7年間で創業から約6倍の規模に成長しており(収入保険料)、マーケットシエアも4.4%から8.0%(2013年)に拡大。生命保険業界での順位も16社中、第4位に浮上しました。インドでは、2つの現地大手国有銀行との合弁によって、保険事業を展開しています。日本の生命保険会社では初のインド生保事業進出となりました。インド全土の5,000を超える銀行の営業店舗で保険販売を開始し、2013年にはインド生命保険業界民間生保23社中10位※にランクアップしました。(※初年度保険料ベース)
タイでは、現地の有力保険会社に出資(24%)し、貯蓄機能の高い保険商品を中心に販売しています。2013年度の業界ランキング(保険料収入)は24社中8位。効率的な業務オペレーションなど良質な経営を行った会社に与えられる「優秀保険会社賞」を3年連続で受賞しています。インドネシアでは、現地の保険会社とその親会社(金融持株会社)に資本参加(24%)し、保険会社の社名を「パニン・第一ライフ」に変更して展開しています。2013年度には前年比で45.7%の増加(収入保険料)となり、業界ランキングも2009年の15位から11位に上昇しました。

先進国市場での展開は?

オーストラリアでは、現地保険会社への出資をきっかけに関係が深まり、2011年に完全子会社として社名も「TAL」に変更しました。TAL社はオーストラリアの保険(保障性)市場で業界1位(2013年)となり、「年間最優秀保険会社」にも3年連続で選出されました。
米国においては、プロテクティブ生命を完全子会社とする手続きが2015年2月に完了しました。プロテクティブ生命は1907年にアラバマ州で創業した老舗の生命保険会社で、個人向け保険や年金を主業務とし、約4億ドル(460億円)の収益を上げている会社ですから、課題とされていた収益の多様化が実現し、グループ連結収益を大きく向上させることになります。
くわえて、米国では生保以外でも資産運用会社にも投資し、関連会社としています。

第一生命が海外事業で目指すもの

保険事業の海外展開には、それぞれの国の生活習慣はもとより、金融や生活保障に関する法律の違いなどを十分に考慮したうえで、10年、20年先を見通して努力を続けることが求められます。「商品が売れなければ、さっさと撤退すればいい」といった姿勢では、暮らしに根を下ろした保険事業を展開することはできません。
私たちは成長途上のアジアの国々や、経済的先進国である米国やオーストラリアにおいて、保険商品を売ることだけが目的ではなく、第一生命が創業以来の精神とする「お客さま第一主義『一生涯のパートナー』」をパートナー各社と共有しながら、保障と安心を世界に広く提供することを目指しています。

全社員が“海外”を意識して働く時代へ

第一生命では2013年より各国の企業トップが集まる会合を定期的に開催すると同時に、さまざまな部門のリーダーを集め、一緒に研修を受けたり、ミーティングを行なうことによって交流を推進し、そこで得た経験を各国や各職場に持ち帰って活かすことのできる取り組みを進めています。
そのため、国内営業やアンダーライティングの部門長が、各国で同じ仕事をする人たちと交流する機会が増えています。国内部門の若手がアジアのグループ企業に赴任して指導したり、チームを組んで働くケースも増えていくと思われます。現在、タイでは国内支社のオフィス長の経験者が、営業職員チャネルの仕組みの導入や人材教育に携わっています。
“海外”と関わるこうした事例が増えることにより、社内の意識が急速に変わってきたように感じます。社員のひとり一人が「この経験は海外で役に立つだろうか」「海外のあの取り組みを自分の仕事に活かしたい」などと考えるようになったとも言われています。こうした意識変化は「アジアを代表する世界トップクラスの保険会社」を目指す当社にとって、必要なプロセスであると考えられています。

海外事業を担う本社の取り組み

最後に、海外事業を担う国際業務部の構成を紹介しておきましょう。それは4つの業務によって進められています。

国際業務部の4つの業務

(1)新たな進出先の市場調査、産業調査をはじめ、進出計画の立案や、海外の生命保険会社の買収などに関わる業務。
(2)海外の進出先企業の経営や営業実績を管理・統制する業務。
(3)営業、ITシステムや再保険、アクチュアリーなど専門分野の特殊なスキルを持ったスペシャリストによって現地企業を支援する業務。
(4)第一生命の海外現地法人の管理、海外で働く職員の活動を国内からサポートする支援業務。
第一生命の海外事業は、この4つの業務の担当者がそれぞれの役割を果たすことにより、展開を加速させているのです。

海外事業の仕事について理解を深めることはできましたか。今回の授業はここまで。6限目は資産運用です。お楽しみに!
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